昔、薩摩藩の平田靱負という家老は、幕府から命じられた木曽三川の改修工事を済ませた後、現地で薩摩の方角を向かって切腹しました。多大な出費を藩に負わせ、多くの部下の命を失わせたことの責任を感じたからだそうです。まさしく我欲と正反対の生き様だったのでしょう。少年のころ、この話を読んで感動したのを思い出します。
東京電力の福島原子力が、危機的状況にあります。そのご家老様たちに相当する、役員達は何をしているのでしょうか。顔が見えてきません。ひとつ間違えば、東日本が廃墟になるかも知れないというこのとき、まさしく株主という藩主から委託された事業の采配役ではありませんか。今まで原子力はクリーンで安全だと世間にも社内にも喧伝し続けてきたではありませんか。原子力の不安を口にするような社員にはそれこそ非国民扱いをしてきたことはお忘れでないでしょう。
確かに今回の津波は予想の三倍を超えるもので想定外のものかも知れません。しかし、こうした不規則な自然現象は、予想の三倍くらいはありうる値だというのが常識となっているはずです。言い訳は許されません。
いま福島サイトで放水作業が行われていますが、ほとんど盲目状態で作業されています。このまままでは、福島県が本当に廃墟とされてしまうかも知れません。人間の目が原子炉建屋内に入ることができれば、多くの人命が助かります。
幸い被爆の許容量が二五〇ミリシーベルトまで引き上げられることになりました。同じ値の線量のところで一時間までは作業が可能です。それだけの時間があれば、ホースのノズルとテレビカメラを原子炉上部の鉄骨に取り付けてくることも可能ではないでしょうか。そういう現場の作業をぜひ、東京電力の役員の方にお願いしたいのです。地域の住民や株主の信頼を取り戻すためにも。高給や名誉を伴う取締役という地位は、優秀な学歴や過去の忠誠心へのご褒美というわけではないのでしょう。まさか、この期に及んで保身を考えている方はいないでしょうね。協力会社や、若い従業員を使わないでください。
万が一、重度に被爆されて御身に危険が及ぶことになっても、あなたのお孫さん達にお伝えしたいものです。「君達のおじいちゃんは立派だったと。」 私がそんな立場にあればぜひとも任に当たりたいと思います。どうせ一度は死ぬ身なのです。こんな名誉な死に場所はないでしょう。
今こそ日本中が我欲を捨てるべきときだと思います。東京電力全社員の名誉のためにもぜひともお願いします。
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